大分市の友人のPAPAさんから、面白いものをいただいた。 ARMY GREENという名前のある缶だ。 絵でわかるようにコーヒーの粉が中に詰まっている。 ARMYというのは、小学生でもわかるであろう「陸軍」の英訳だ。 ARMY GREENという色は、オリーブドラブと同じだ。つまり軍隊の緑色なのだ。 つまり、このコーヒー缶は、軍隊で使われている軍用コーヒーだと推測。 日本に軍隊はいないので、該当するものは陸上自衛隊だろうか。 こんな大きな缶に入っているというのは、幕営地で大人数にコーヒーを供するためのものだろう。 つまり、業務用(軍用)のコーヒーというわけだ。 思わず、考えてしまう。 日中の激務を忘れた夕食後のひと時。 演習場に張られたテントから隊員がやってくる。 ついついコーヒーが飲みたくなるのは自然の摂理だろう。 コーヒーで今日の疲れを癒したい隊員が酒保にやってくる。 インスタントコーヒーではないきちんとしたコーヒーを入れる酒保の隊員。 そばには開封されたARMY GREENの大きな缶。 冷たい外気にコーヒーの温かい湯気が流れていく。 「さあ、明日の演習もがんばろう」 ううん、いい雰囲気ではないか。格好いい漢の世界だ。 そこで、PAPAさんに、おそるおそる、どこのPXで入手したかと聞いた。 PXというのは、自衛隊や米軍で、酒や食品、衣料などを販売する店舗のことだ。自衛隊版コンビニというものだ。 すると思いも寄らぬ返事が返ってきた。 「いやあ会社の忘年会で引き当てた」 「はい?忘年会?」 忘年会の景品に、ミリタリースペックのコーヒー缶がもらえる会社って、PAPAさん、あなたの所属する会社って? まさか、やっぱり....。 実は、主宰はPAPAさんの仕事を知らない。 大分市の中判田という地区で「公務員」をされているということまでは、知っている。 彼は、主宰の大事なお友達で、佐伯市にくれば、主宰の家が彼の家となり、大分市に出撃したときは、彼の家が主宰の家となる。 バイクも融通するし、お互いひとりものということで、朝まで酒を酌み交わす仲でもある。 そんな「漢」の付き合いだ。 しかし、詳細な仕事まで詮索したことは、ついぞなかった。頭髪はいつも短いし、ガタイもいい。口調も自分自身を言うときは「自分」というからそっち系だ。 仕事をいつか聞こう聞こうと思っていたが、なんだか改まって聞くのは照れ臭くなって、聞きそびれていたわけだ。 「自分もコーヒーは飲むけど、こんなに大量は要らない」 そういうことで、気前よく主宰に譲ってくれたというわけなのだが。 「しかし、PAPAさん、これもらっても自衛隊法とか抵触しないよね」 「ええ?」 おそるおそる切り出すと、彼は豪快に笑い飛ばした。 「いやあ、自分は隊員じゃないし(笑)」 話によると、彼は「公務員」だそうだが、防衛省とはまったく関係ない部局に所属する「地方公務員さん」らしい。国家公務員特別職ではないという。 なんだかんだで土曜、日曜も半日は仕事に出ているというから、とんでもないブラックな部局のようだ。 さて、本論に戻ろう。 なんともなぞめいたARMY GREENコーヒーであるが、実はとんでもない裏があった。 実は....。 実は。 このARMY GREENという製品は、日本の共栄フーズが作った民間の「汎用」のコーヒー缶だった。名前にARMYがついていることと、どでかいインパクトのある緑色の缶が、思わず軍用品を想像してしまうが、実は昔からファンの多い、息の長いコーヒーだったのだ。 サイトを紹介しよう。http://mjb-coffee.co.jp/history/index.html である。 もともとは、1881年に米国サンフランシスコで起業した、Max氏とJohn氏が始めたコーヒー、紅茶、スパイスの輸入会社が起源という。 Max氏の名前のMax Joseph BrandensteinからMJB社が出来たというわけだ。このMJB社はコーヒー業界に後発組として参入したので、このようななぞめた名前をつけたという。 キャッチコピーも MJB WHY? だった。 缶入りレギュラーコーヒーのブランドとしてアメリカで認められたMJB社の缶入りコーヒーは、敗戦後の日本にも進駐軍を介して広まり、有名になった。 1962年にMJB社と、日本の共栄フーズ社が合併で日本法人が出来た。 これが、ARMY GREENを発売する会社として息の長い販売を今も続けているというわけだ。 やはり、ARMYは進駐軍のことだったのだろうか。 強烈なインパクトを与えるこのARMY GREEN。どんなお味がするのか、907gを一人で消費しなければならないので、躊躇している。 |