林道の旅人

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四方山話 第3話
 
ARMY GREEN 後日談






大分市のバイク乗りPAPAさんからMJBコーヒーをいただいた話を書いた。

 ARMY GREENという軍隊を彷彿する商品名から、自衛隊のコーヒー?と勘違いしてしまったのだが、これはれっきとした民生品だった。

 大元はアメリカである。社名のMJBとは、マックス・ジョセフ・ブランデンシュタイン(創業者)の名前の頭文字を使ったものである。

 サンフランシスコで、MJBコーヒーは業界では後発組だったため、MJBという意味の分からない社名を逆手にとって、MJB HWY?というCMで知名度を上げたといわれている。

 日本と縁がなかったかというと、実はおおありで、緑茶を輸入して販売していたのだ。Japanese Greenという名前だったという。




そんなMJBだが、1940年代に進駐軍が大量に持ち込んだことから粉コーヒーのブランドとして日本での知名度が高まった。当時の日本は粉コーヒーではなくインスタントコーヒーが主流だったので、進駐軍が撤退した後、横浜、神戸、東京、大阪などの高級輸入食料品店から民間に降りてきたようだ。

 主宰は軍用品と誤認したが、歴史を考えたら当たらずとも遠からずだったような...。
 
 1960年代に日本の共栄フーズと合弁会社を作り、現在まで製造販売を行っている。息の長い会社だ。



 さて、この缶をいただいたのだが、907gものコーヒーをどうしたらよいか処置に困っていたのも事実だ。

 PAPAさんも「自分もコーヒーは飲むけど、こんなに大量はいらない」と言うだけの量だ。

 PAPAさんと同じく独り者の主宰としては、缶を開けたら大変なことになると予想される。

 コーヒーの粉は鮮度が命だ。缶を開けて酸素に曝した瞬間から劣化が始まるのだ。

 どうしたものか。会社でちらっと話したら、総務の女史が食いついてきた。

「いらないなら会社で飲みましょう。みんな喜ぶわ」

 なるほど。その手があったか。

 ということで、PAPAさんからのプレゼントは会社でありがたくいただくことになった。



 しっかり封されている缶に、缶切りで一撃を与える。さあ、どんな粉コーヒーが出てくるのだろう。酸味の強いモカ風のコーヒーだろうか。それともブルーマウンテン風のまったりした風味だろうか。それとも。



 缶にしっかり詰まった粉コーヒーが姿を現した。かおりはどうだろうか。うん、普通のコーヒーのかおりだ。モカの強い酸味のかおりではない。しかし、結構粒が荒いな。



 実は主宰は大学時代に、喫茶店でマスター代理を数年していたことがある。

 ママの休みの日にカウンターに入る仕事だ。昼前から深夜まで開けているので、ママ一人では続かない。

 初めはお客さんだった主宰が見染められたようで、気が付けばマスター代理になっていた次第。

 いつもはウエイター&お掃除お兄さんだったが。

 その時に、業務用サイフォンで使っていた粉コーヒーがこんな荒さだった。

 とすれば、業務用と同じような可もなく不可もないコーヒーができると考えていいかもしれない。




 酸化(劣化)させるわけにはいかないので、コーヒーの空き瓶にMJBコーヒーを詰めておく。

 空になった缶は会社で入れ物にするようだ。



 会社のサーバーで入れてみる。

 かおりはまあまあだ。

 一口飲んでみる。

 おや、これは喫茶店のレギュラーコーヒーじゃないか。

 喫茶店で普通のコーヒーを頼んだら出てくる奴に味わいが似ている。

 まさしく業務用のコーヒーだ。

 
 会社でふるまった感想は好評だった。

 「コーヒーは胃にもたれるからあまり飲めない」という総務の女史も、このコーヒーは胃に優しいという。

 苦みがあまりないためかもしれない。

 しかしカフェインはしっかり入っているようだ。

 おかげで総務の仕事消化率が上がったようで、いろいろの書類が現場にすぐ降りてくるようになってしまった。
 
 社長も社長室を抜け出して、笑顔でコーヒーを飲みに来るようになった。

 2週間もしないうちに主宰の提供したMJBコーヒーは社員の腹の中に納まってしまった。

 どこで手に入れたのだろうか。

 気が付いたら総務の給湯室に新しいMJBのARMY GREENの缶が3つ無造作に置かれてあった。

 恐るべしARMY GREENである。

 やはり、907gなんて缶は業務用がふさわしかった。

 以上が後日談である。

 通販で有名なAMAZONでも、ARMY GREENは入手できるようだ。 ここからどうぞ。

 大量にコーヒーを飲む方にはお勧めの一品である(あえて逸品とはいわない)。

 飲みすぎて眠れなくなっても主宰は関知しないのでそのつもりで(笑)。

 この面白いコーヒーをプレゼントしてくれたPAPAさんだが、4月の異動で主宰のいる佐伯市にやってくることになった。

 地方公務員ということで、てっきり大分市の職員だと思っていたが、どういうことかわからないが、佐伯市に来るらしい。

「給料は大分県からもらっているんだ」

 挨拶に主宰の家にやってきたPAPAさんは、そんな謎めいたことを話してくれた。

 市内に転任ということだが、職場は旧南海部郡の弥生町らしい。そんなところに県の機関があっただろうか。

 いやいや、頭髪を短くして一人称の呼び方を「自分は」などというPAPAさんのことだ。

 もしかしたら防衛省の特務機関か何かの仕事なのかもしれない。MJBコーヒーを忘年会で景品に出すような職場だ。きっとそうに違いない。今度は職業を確かめてやろう。

 これから大分市の中判田の拠点が無くなるのは悲しい(主宰は大分市方面に行くときはPAPAさんの家に厄介になっている)と言ったら、持ち家の中判田の家から佐伯市に転居するつもりはないらしい。

「大分市と佐伯市の間に、林道はたくさんあるな。通勤路に使ったらいけないとかないよなー」

 大した親友である。

 まあ、なにかあれば主宰の家が彼の家でもある(相互依存中)。楽しく宴会ができる機会が増えるというものだ。そうだ。今度は新生にっぱちで着任祝いをしてやろう。
 
 楽しみがまた増えたというものだ。






  

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